工事監査で発注仕様及び施工区域の把握が不適正との指摘を受けた事案の根底にある課題と再発防止に向けた取り組みを効果的なものとするために必要な取り組みについて( R7. 2)
質問
令和6年度における大津市監査委員による工事監査において、予定価格が130万円を超えないため、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号の規定により随意契約された工事において、発注仕様及び施工区域の把握が不適正な事案が確認されました。以下、令和6年度前期における監査結果から当該指摘部分を引用いたします。
発注仕様及び施工区域の把握が不適正な事案は、中学校体育館の雨漏りの発生に伴い、令和5年度に幾度か修繕が行われたが改善されなかったため、令和6年4月及び同年5月に施行された防水工事である。発注した担当課は、工事の施行箇所について、実際には、正確な施工区域の把握ができていなかった。
令和5年度の定期監査結果において、小・中学校における小額修繕工事の事務処理が不適正であった事案を指摘し、それに対して、令和6年5月28日付け大教委総第118号にて、教育長から必要な措置を講じた旨の通知があった。また、小・中学校における防水工事については、令和6年2月28日付け監査委員事務局長通知により、施工面積の出来高確認ができておらず、施工箇所の図面も作成されていないことを指摘しており、それに対して、令和6年3月19日付けで教育部長から改善内容の報告があった。
これらの通知及び報告において、小額修繕工事の管理台帳を改善することで確実な進捗管理を行うことを始め、必要な措置を講じるとされているが、本件防水工事を見る限り、機能していないといわざるを得ない。なお、本件防水工事の施行期間の前後である令和6年4月から同年6月までにかけて、今回の工事監査対象の体育館の雨漏りに関して約30万円の修繕が5件実施されているが、これらは修繕料ではなく工事請負費で支出すべき事案である。
さらに、小額修繕工事の管理台帳が早期に改善されていれば、本件以外に発注された修繕工事の施行区域や工事の内容が整理でき、より効率的な工事発注が可能であった。
引用は以上となります。
当該体育館には金属屋根が葺かれています。素材の特性として、風雨や紫外線などにより経年劣化が進むと塗膜が色あせ、適切な時期に再塗装されないと錆が発生し、放置を続けると腐食が進んで防水機能が損なわれることになります。屋根材の耐用年数を踏まえ、適正に維持管理が行われてこなかったことが雨漏りに至った根本の原因であると考えます。
大津市教育委員会は学校施設長寿命化計画を踏まえ、改修のあり方を検討されてきたと承知しています。その結果、令和7年度新年度予算において、体育館屋根改修工事に係る実施設計費用が計上されるに至りましたが、これまでの間、この先に予定される改修工事を視野に入れながら、あくまで応急的な対応として、迅速かつ安価に対策を講じることが求められていたと推察するものです。緊急性の高い修繕工事であり、この方針自体は否定されるべきものでありませんが、大津市監査委員から発注仕様及び施工区域の把握が不適正との指摘を受けるに至った大きな要因であったと考えます。
予定価格が130万円以下であり、随意契約により工事契約を行う際には、2者以上から見積書を徴取する必要がありますが、これとは別にあらかじめいずれかの事業者から参考見積書を徴取されることがあります。金抜き設計書の作成にあたって利用されると承知していますが、令和5年度財務監査において、小中学校における防水工事については、参考見積の徴取が特定の事業者に偏っていたとの指摘がなされています。
随意契約による小額工事や修繕の契約に係る事務執行については、大津市財務規則及び大津市契約規則、大津市財務会計事務の手引きや大津市小額工事(委託)の随意契約ガイドラインなどを遵守して行う必要があります。随意契約はあくまで契約方式の例外として行われるものであり、透明性と公平性を確保し、適正に契約手続きを行うには、見積合わせの公正な執行が不可欠となります。
また、参考見積書の提出を依頼した事業者から、随意契約が可能となる価格内での算出が作成の前提条件と受け取られる可能性があります。修繕工事においては、使用建材の種類や作業工程、施工箇所や区域は機能の回復に適したものなのか、予断なく精査する必要があると考えます。
大津市小額工事(委託)の随意契約ガイドラインにおいて、所属長は作為的に分割発注されていないかを確認する必要があり、正当な理由がなく、意図的に発注時期を分けて別案件とすることが禁止されています。また、徴取した全ての見積書に対して、やむを得ない工種を除き、一式計上せず、数量等明細が記載された見積書を徴取することが必須事項として定められています。
この度の事案においては、当該上限価格の範囲内での小額工事、また、総務部契約検査課への発注依頼が必要とならない価格での修繕では雨漏りはおさまらず、随意契約が幾度も繰り返される結果となりました。先に申し述べましたが、この先に予定される改修工事を視野に入れながら、迅速かつ安価に対策を講じることを優先されたことについては理解するものですが、工事監査で発注仕様及び施工区域の把握が不適正との指摘を受けるに至ったこと、そして、何より、今もって雨漏りがおさまっていないことを重く受け止めています。
大津市は工事監査で発注仕様及び施工区域の把握が不適正との指摘を受けた事案の根底にある課題をどの様に評価しておられるのでしょうか。見積合わせの公正な執行と参考見積書の内容を精査することの重要性についての見解を求めるとともに、大津市監査委員から指摘のあった徴取先が偏っているとの指摘に対する課題認識についても、あわせて見解を求めます。
また、大津市は令和6年11月より、これまで所属ごとに行ってきた市民センター、幼稚園・保育園、小中学校、合計134施設の維持管理に係る業務を包括マネジメント事業者に一括して委託しています。当該委託によって得られた知見や実績にいては、大津市が直接発注する施設の修繕工事に係る参考見積の徴取や見積合わせのさらなる適正化に活かすべきと考えます。これらに係るマニュアルを見直し、充実させることについて見解を求めます。
次に、大津市教育委員会に質問します。令和7年2月5日付で大津市教育委員会が講じた措置内容の公表が行われました。このなかで、「発注前に事前に業者と十分な協議を行い、施工箇所の図面を作成するなど、施工区域を正確に把握するとともに、完工後は図面と完工写真を突合することにより、施工区域が適正であることを確認する。また、完工届の決裁時には、副担当者も含め複数人で確認することを徹底する。」とされていますが、具体的にどのタイミングで何を目的として施工業者と協議を行うつもりなのか。そもそも、施工区域はどの様な検討と精査を経て決定されることになるのでしょうか見解を求めます。
この項の最後、監査委員に質問します。大津市監査委員は令和6年度前期監査結果において、「小額修繕工事の管理台帳が早期に改善されていれば、本件以外に発注された修繕工事の施行区域や工事の内容が整理でき、より効率的な工事発注が可能であった」と結論づけておられます。効率的な工事発注が行われていたとするならば、どのような効果が期待できたと考えておられるのでしょうか。「効率的」との言葉を用いられた理由と不適正な契約事務が継続して発生していることへの課題認識をあわせてお聞かせください。
答弁:総務部長
1点目の工事監査での指摘に対する課題についてでありますが、見積合わせの公正な執行のためには、発注前に担当者が工事内容を十分に把握したうえで参考見積書を徴取し、見積内訳を十分に精査することが重要であると認識しております。各所属において施工及び契約事務の適正化を図るため、職員向け研修会や小額工事の随意契約ガイドラインにおいて、具体的な事務手続きや注意点などを示しているところです。
見積書の徴取先の偏りに対する課題認識についてでありますが、業種によっては対象業者数が非常に少なく、地域条件を考慮しての業者選定が困難な場合があることは認識していますが、そのような場合であっても徴取先が特定の者に偏らないよう留意することとしています。
2点目のマニュアルの見直し、充実についてでありますが、今回の工事監査での指摘を課題として認識するとともに、小額工事の随意契約ガイドラインについて、より具体的で詳細な事案を明記するなど、職員がより適正に事務を執行できるよう内容の見直しに努めてまいります。
答弁:教育長
3点目の、大津市教育委員会が講じた措置内容についてのうち、具体的にどのタイミングで何を目的として施工業者と協議を行うつもりなのかについてでありますが、修繕や工事の対応としましては学校からの修繕依頼等を受けて、まずは現場状況の確認を行い、修繕等の対応が必要と判断した時点で、対応方針を決定することを目的に、専門業者と現場立会を行い、施工方法についての協議を行っております。その後、見積照合を行い、本市の技術専門職員による査定を経て、施工業者を決定するとともに、施工業者とは着工前には施工内容等を確認するための協議を行っております。
また、施工区域はどのような検討と精査を経て決定されることになるのかについてでありますが、学校の教育活動に支障が出ないように迅速かつ経済的・効果的という観点から検討を行い、専門業者の提案等も参考としつつ、施工内容や区域等を決定しております。その際、担当課での判断が難しい場合などは、必要に応じて本市の技術専門職員にも相談しております。
答弁:代表監査委員
4点目の令和6年度前期監査結果についてのうち、まず、効率的な工事発注が行われていたとするならば、どのような効果が期待できたと考えているかについてでありますが、早期に問題点が把握でき、体育館の雨漏りの調査結果に基づいて施工方法や施工範囲等が十分に検討され、適切に施工されることが期待できたと考えております。
次に、「効率的」との言葉を用いた理由についてでありますが、担当課において早期に問題点が把握され、そのことから見積照合による適正な費用算定、施工期間の短縮及び迅速な事務処理手続等が可能であったとの観点から、「効率的」という言葉を用いました。加えまして、「より適正な」という意味合いも含めております。
次に、不適正な契約事務が継続して発生していることへの課題認識についてでありますが、担当課において、財務会計事務等に関する職員の理解が不足していること、また、技術支援の手段がうまく活用できていない状況にあることなどが課題であると認識しております。
再質問
工事監査で発注仕様及び施工区域の把握が不適正との指摘を受けた事案の根底にある課題について。発注前に工事の内容をしっかりと把握する必要があるといった趣旨で答弁をいただいたものと理解いたしました。工事の内容を決定するにあたって、専門業者さんのアドバイスを受けられることを否定するものではありませんが、参考見積を徴収する前の段階で工事内容を把握する必要があるという趣旨で答弁をいただいたのか、時系列で見たときにそうではないのか、その点、もう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか。
私、この度の質疑・一般質問をするにあたって、参考見積書を参考に金抜きの設計書を作成されていると承知をしているのですが、専門業者からの提案をしっかりと精査いただかないとだめだというふうに認識しています。今の指摘を踏まえてあらためて答弁を求めます。
答弁:総務部長
再度のご質問にお答えいたします。状況確認、参考見積書の徴取ということですけれども、まずは、工事内容を十分に把握した上で、担当者が、そこで参考見積を徴取するということでございます。そのあとに、その見積内訳を十分に精査するということが重要であるというふうであります。それに基づいて、工事の内容をもう一度精査、工事内容について、見積書と合致しているか、精査をして発注するということになるというふうに認識しております。
再々質問
工事の内容を十分に把握された上で、参考見積書を徴収する必要があるという答弁であったと理解させていただきました。建築の専門職でない職員の方が工事の内容を十分に把握されようと思いますと、専門職の方に相談に乗っていただいたり、また、事前に職員の方だけで現地の状況を確認していただいたりしないと、私は今、おっしゃっていただいた十分に把握はできないと考えております。
その把握の後に参考見積書を徴取なされることが望ましい、本来のあり方を今、お示しいただいたものと承知はするのですが、では、どのような形で工事の内容を十分に把握できると考えておられるのでしょうか。建築課の職員の方々におかれましては、業務量の問題等からも、必要に応じて相談には乗っていただいているものの、こういったチェックについては非常にご苦労いただいているものと承知をしています。この点を踏まえて、あらためて答弁を求めます。
答弁:総務部長
再度のご質問にお答えいたします。工事内容の把握ということでございます。谷議員のご質問にありますように、工事内容の把握のみならず、財務規則でありますとか、契約規則、そして、少額工事の随意契約ガイドラインについてのご質問を今回いただきました。小額工事あるいは施設の修繕の執行に当たりましては、これらの規則でありますとか、ガイドラインにおいて定められた内容に基づいて、各所属で事務処理を行っているところでございます。そういった中でありますが、今回、先ほど代表監査委員の答弁にもありましたとおり、担当課において財務、会計事務等について、理解が不足しているという答弁、そしてあと、技術職員からの支援がうまく活用できていないという答弁もございました。
昨年度、令和5年度からでありますが、契約検査課と建築課と合同で職員研修会を開催しているところでございます。その中で、小額工事の随意契約ガイドラインに示しました事務手続きの内容を確認することはもちろんですけれども、担当者は現場の状況や工事施工内容をまずしっかりと把握し、工事の施工内容に疑問点等があれば、建築課に相談するということも併せて周知をしているところでございます。今後、職員研修会におきまして、随意契約のガイドラインはもちろんでありますけれども、ご質問のありました財務規則、また契約規則、そして、財務会計事務の手引きに記載している内容を盛り込むことによりましてですね、また今回の事案を課題として認識して、具体例を挙げるなどして、本研修会、また、ガイドラインの適正充実を図って、適正な事務の執行に努めてまいりたいというふうに考えております。