歴史文化を生かしたまちづくりについて( H25. 11)

質 問

 大津市が古都として政令指定を受けてから本年で10年目を迎えたことを記念して、去る10月6日に、次世代へつなぐ大津の景観をテーマとした事業が開催された。景観クルーズにおいては、大津市並びに景観施策において連携を図る草津市から多くの子どもが乗船し、近江八景でつながる琵琶湖の風景について理解を深められた。
 びわこ大津草津景観宣言の推進を目指す上において大変意義深く、びわこ大津草津景観基本計画の策定に向けた確かな歩みになったものと確信する。今後も、歴史文化を生かしたまちづくりの推進に期待をするものだが、大津市においては、文化財をその周辺環境も含めて総合的に保存活用するための計画が策定されておらず、大津市都市計画マスタープランにおいて掲げられている環境共生都市の実現が効果的に図られていないのが現状である。
 文化庁が平成24年2月に策定した歴史文化基本構想策定技術指針の趣旨を踏まえながら、本市の特性に応じた文化財保護施策の方向性を体系化し、地域コミュニティのさらなる活性化と地域アイデンティティーの醸成を目指すべきと考えるが、本市の見解を伺う。
 また、平成25年9月通常会議において、大津市においても歴史的風致維持向上計画の策定を目指すのであれば、私は、関係課の連携を強化するためにも庁内連携会議を立ち上げ、計画を策定する意義やその基本方針について検討を重ねるべきと提言を行った。これを受け、大津市は、庁内連携会議のあり方を含め、歴史まちづくり法の制度の有効性について引き続き研究を進めていきたいとの見解を示されたが、今日に至るまでの進捗と今後の見通しについて、見解を伺う。
 なお、11月通常会議においては、大津市歴史博物館の常設展示室における観覧料の値上げが審査対象となっているが、本市においては、月初めの「広報おおつ」に文化財家族参観券が添付され、毎月第3日曜日の家族ふれあいサンデーには大津市歴史博物館を含む寺社への入場が無料となる取り組みを行っている。大津市民憲章にも掲げられている豊かな文化財を守る気持ちを育むのであれば、少なくとも義務教育を受けている子どもを対象にした値上げは行うべきでなく、大津市総合計画第3期実行計画における施策、歴史や伝統に触れるまちづくりにおいて、歴史博物館来館者総数、貸し館とも数値目標となっていることからも、矛盾する取り組みである。
 今年度に実施された施策評価の結果によると、昨年度の実績は、基準値である平成23年度の実績を大きく下回るものだったが、大津市は総合計画における施策の位置づけをどのように評価し、大津市歴史博物館における観覧料の値上げを適正なものと判断したのか、見解を伺う。 

答弁:教育長

 歴史文化基本構想は、地域に存在する文化財を、指定、未指定に関わらず幅広く捉えて的確に把握し、文化財をその周辺環境まで含めて総合的に保存活用するための構想と位置づけられている。大津市の歴史的、文化的な状況を踏まえると、こうした基本構想を策定することは、文化財保護の将来や地域にとっても有意義なことだ。ただ、市内には、古代から近代に至るまでの幅広い時代にわたって数多くの貴重な文化財が所在しているため、どのような構想を目指すべきかについては慎重な議論が必要である。大津市の文化的特徴を考えるためには、時間と空間が複雑に絡み合った地域の歴史の分析とそれぞれの時代の日本の歴史を視野におさめ、幅広い観点から考えることが必要だ。そのためには、文化財の把握という作業が基礎となる。現在ある情報を整理するとともに、地域の人々の思いを酌み取る地道な調査も必要となってくるが、こうした基礎作業の上に、今を生きる人々にとって、地域を愛する心を育み、将来に伝えるべき文化的特徴を浮き彫りにすることができると考えている。また、この延長線上に歴史文化基本構想の枠組みも見えてくると考えており、こうした作業を進めていく。
 次に、観覧料の値上げについては、全庁的に使用料基準の見直しを図ったもので、維持運営に係る経費の応分の御負担を小中学生も含めてお願いすることになったところである。その中で、議員御指摘の義務教育を受けている小中学生への対応について、これまで歴史博物館では、夏季に実施している夏休み子どもワークショップの開催、常設展示における子ども向け音声ガイドの導入、市内小学校への出張授業など、児童を対象とするメニューの充実化を図っているところである。また、市内各地域の市民グループとの連携によるまちづくりや地域活性化に向けた活動についても取り組んでいるところである。今後は、それらの諸活動の充実化を積極的に進めていく中で、歴史博物館利用者の増加を図るとともに、総合計画第3期実行計画における歴史や伝統に触れるまちづくりで掲げた市民のコミュニティ意識の醸成や地域への愛着づくりの実現に邁進する所存であり、御理解いただきたい。
 なお、年度当たりの来館者については、開催される展覧会の回数や内容によって、議員御指摘のような変動が出てくる。 

答弁:都市計画部長

 歴史的風致維持向上計画の策定に向けた取り組みについて、9月通常会議以降今日に至るまでの進捗として、歴史まちづくり法の制度の有効性における研究のため、11月に、国土交通省による古都保存行政をめぐる最近の動きフォローアップ懇談会や、公益財団法人都市計画協会主催の都市計画全国大会へ参加をしたところである。また、今後の見通しについては、これまでの調査研究結果について、まずは教育委員会との勉強会を開催するなど、庁内連携会議のあり方を含め、歴史まちづくり法の制度の有効性について引き続き研究を進めてまいりたい。 

 

再 問

 先に都市計画部長に伺う。教育委員会と勉強会を実施し、研究を重ねていくということだが、先ほど来、研究という言葉が答弁で多分に見受けられるが、研究していただくのはもちろん大事だが、私は実施に向けた検討を開始していただくにふさわしい時期があるはずだと思う。質問でも触れたが、新たな総合計画を展望しながら大津市都市計画マスタープランを今後新たに改定するため次年度以降に検討し、必要なら国土利用計画も検討し、機構も見直す。教育委員会との勉強会、大いにやっていただきたいと思うし、研究も進めていただきたいが、機関をまたぐ取り組みとなるので、どなたかがよほどのリーダーシップを発揮しなければ、研究だけで終わってしまって、次期都市計画マスタープランや国土利用計画を具体的に検討していこうと思ったときに、古都大津としての魅力や、そして次世代に継承していきたい思いというのが反映され切れないおそれがある、私はそれを懸念して毎回質問をさせていただいている。
 改めて伺うが、どなたがリーダーシップを発揮して、今述べられた研究なるものを進めていき、最終的な検討につなげてくのか。

 引き続き、教育長に伺う。

 今、歴史文化基本構想の必要性については一定認識されていることを確認したが、答弁の中で、「大津市は古都である。古代から近代にわたって貴重な文化財がたくさんあり、そのような文化財を対象に調査をしていくためには非常に時間もかかるし、基礎作業としてしっかり研究をしていく延長線上に歴史文化基本構想の策定もあるんだ。」ということを述べられたが、大津市が、節目節目で策定をしようとするまちづくりの基本となるべき指針は、一定の時期を迎えれば市民に伝え周知し、それをベースに10年間なら10年間のまちづくりをしていかなければだめだ。そういったことを踏まえるなら、本当に必要な基礎作業として、人的な配置を充実する必要があるし、業務の見直しも図る中で、古都大津として何を優先してまちづくり、そして子どもたちに伝えていかなければならないことを決めていくのかを議論し研究いただく必要があるのではないか。 どういう形で今の答弁の内容を実行しようとしているのか、もう少し具体的な答弁をいただきたい。

 もう一点は、歴史博物館について。

 子どもにも応分の負担をいただく、というその理屈はわかるが、冒頭申し上げた、大津市においてはびわこ大津草津景観宣言も調印されたが、古都としてまちづくりをしていこうということを内外に発信されたはずだ。行政改革も大事だが、大津市として将来にわたって譲れることと譲れないことがあると思う。ですので、そういう思いをしっかりと次世代の子どもたちに伝えていきたいからこそ景観クルーズのような事業をなされたと認識しており、参画もさせていただいた。
 歴史博物館には、近江八景が立体展示されている。過去何度も寄せていただくたびに新たな気づき、また勉強をさせていただいている。私が夢に描くのは、大津の子どもと草津の子どもが並んで、あの非常に大きい近江八景の立体展示を見てもらい、将来にわたって子どもたちがこういう美しい景観、歴史を守っていかなければならない、と考えていただければと願っている。
 しかし、今の答弁では、大津市が今後どういうまちづくりを展望していくのか、そして執行部理事席の後ろにも掲げられているけれども、どういった思いで大津市民憲章の実現に努めていくのかが伝わってこない。そういった点も含め、改めて見解を伺う。 

答弁:都市計画部長

 今回の歴史まちづくり法については、私もこの歴史的建造物が多いこの大津のまち、あるいは全国に誇る祭りもあるということで、その有効性を研究中でだが、一定、大津に合う、ふさわしい法だと認識している。しかしながら、この歴史的風致維持向上計画をつくるに当たっては、まずは歴史文化基本構想というものが必要だということも聞いている。ついては、先ほどの答弁のように、その構想の所管である教育委員会とともに同じ方向を向けて研究をするということがまずは大事であると認識しており、今年度からでも協議の場を持ち進めていきたい。
 また、都市計画マスタープランへの反映については、この両者の今後の研究がすぐに反映できるようであればそれは大変うれしいことではあるが、今のところまだそこまでは反映できるか、今回の変更に反映できるかどうかわからないが、その辺の整合についてもあわせて研究してまいりたい。 

答弁:副市長

 私からの補足として、歴史豊かな本市の特性あるいは強みを正確に自己評価すること、これが一つと、それから国の動向とか制度等を踏まえまして本市の利益増進を図るという、この二つのことが大事だと思っている。こうしたことを踏まえて、歴史まちづくりについて考えていきたい。まだ、具体的なスケジュールを申し上げるまで熟成していないが、こうした基本姿勢で取り組んでいくということを申し上げさせていただきたい。 

答弁:教育長

 先ほどの都市計画部長からの答弁のとおり、まちづくりの基本方針を策定していく中で十分連携しながら、議員御提案の歴史文化の基本構想を策定していくという作業を進めなければならないと考えており、大きな方針、例えば策定のためのマイルストーンを定めて、それでもって進めていくといったようなことで具体的な進捗を図りたい。 

 

再々問

 教育長に伺う。改めて簡明にお訊ねするが、大津市がこれから次世代を見据えて行っていこうとするまちづくりにおいて、義務教育を受けている子どもを対象にして値上げを行うことにどういった意義があるのか、と訊いている。 具体的には、子どもの拝観料、中学校、小学校は現行100円のものを160円にしようとするものであり。もちろん60円値上がりすれば歴史博物館にとっては非常に貴重な財源となるわけだが、私は60円を値上げすることによって得られる効果よりも、むしろ値上げすることによって大津市が今の次世代の子どもたち、次世代のまちづくりを担う子どもたちに対してどういうメッセージとして伝わるのか、ということを懸念するわけである。先ほどの答弁でのさまざまなメニューを充実していただき、子どもたちに対してそういった教育を実施いただくことについては大変高く評価をするものだが、改めて見解を伺う。 

答弁:教育長

 確かに御指摘のとおり、義務教育の小中学生に対する観覧料の値上げは心苦しいところだが、市全体の見直しの中でそのように決めたところであり、これらのフォローアップについては、先ほど説明したようなさまざまなフォローアップを通じて、特に義務教育に学ぶ小中学生に対する歴史文化遺産についての認識を高めていきたいと考えており、また他都市の例も比較考慮しながらの判断であるが、そういったような内容でもって関心を高めていきたい。 

 

再々再問

 さまざまなフォローアップを実施していただくには当然予算が必要になってくるし、それに伴って、それを実施いただくだけの職員配置が必要となる。そういうことも今の答弁で担保されるということで理解してよいか。 

答弁:教育長

 最初の質問の答弁での夏季におけるさまざまな取り組みなどを充実させていきたいということで、このことで特別の人的あるいは予算的な配慮ということについては現在のところ考えていないが、現有のリソースの中でそのレベルを上げていきたい。 

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