大津市都市計画マスタープランの実現に向けた取り組みについて( H29. 2)

質 問

 1点目、ジュネーブ構想の必要性について。平成28年11月に開催された大津市総合計画・大津市都市計画マスタープランまちづくりフォーラムにおいて、同プラン案策定専門部会部会長から、かつて大津と琵琶湖はジュネーブのレマン湖に例えられたと紹介され、私自身も大津市の魅力を再認識いたしました。しかしながら、新年度予算公表の直前になって、歴史や風土、そもそもの都市計画が異なることに対する検証も十分に行われないまま、市長自らが唐突に構想名を掲げられたことに私は強い違和感を覚えました。JR大津駅から琵琶湖岸までの中央大通りの地形、琵琶湖岸からの景観が同地を連想させることに由来するそうですが、眺めとしての景観と人々の暮らしや営みに根差して形成される文化的景観とはまるで本質が異なります。私は、他都市の良好なイメージだけを先行して印象づけることは、構想名だけがひとり歩きし、次期大津市都市計画マスタープランがまちづくりの目標として掲げる古都大津の自然、歴史・文化を生かした魅力あふれるまちづくりの妨げになってしまうのではないかと危惧をしています。

 スイスのジュネーブには、国際連合の諸機関など多くの国際機関が所在し、世界各地から多くの観光客が訪れる都市であると認識していますが、大津市議会においては昭和33年3月11日、大津国際文化観光都市建設に関する決議が全会一致で可決され、皇子山ハイツの跡地に国立国際会館を誘致する運動が官民一体となって展開されてきました。当会館は京都市宝ヶ池に建設され、現在に至っていますが、国立ユースホステルセンターが建設整備されたのはこれら取り組みを経てのことです。誘致運動に使用されたパンフレットを見る機会があったのですが、大津市が目指す未来のまちづくりが描かれており、国際文化観光都市を目指す意気込みが伝わってくる内容でした。時代は変われども、市民、事業者、行政が理念を共有して取り組めるビジョンを持つことは大切であるとの考えを新たにしたものです。
 先の大津市都市計画審議会において、ジュネーブ構想は大津市都市計画マスタープランを実現する一つの手段であるとの見解が会長から示されましたが、同プランの精神、構想に沿ったものとする必要があることに加え、このような形で構想を打ち出すことは、最終的に市民や事業者と合意形成を図っていく上で近道にならないと発言されました。この2点については、審議会として注意しておきたいと公言されたことを市長は重く受け止められるべきと考えます。

 次期都市計画マスタープランにおいては、自然、歴史、文化を生かす観光やにぎわい交流の創出が理念に掲げられています。世界的に知られた国際都市との比較を前提とする構想を掲げるのであれば、国際文化観光都市としてこれまでのありようや琵琶湖周辺の文化遺産が琵琶湖とその水辺景観~祈りと暮らしの水遺産~として日本遺産に認定された意義などについても市民、事業者とともに理解を深め、同プランに掲げられた理念をまちづくりに反映させるべきと考えます。大津市長は、中央大通りや湖岸なぎさ公園のさらなる利活用を図るため、なぜジュネーブ構想が必要になると判断されるに至ったのか、私からの指摘、提言を踏まえて答弁求めます。

 2点目、ジュネーブ構想及び大津宿場町構想を打ち出すまでの合意形成のあり方について。ジュネーブ構想の検討に当たり、大津市はJR駅前周辺からまちなか、湖岸における既存ストックを対象とした利活用の可能性、また市場性について調査を行うことを目的として新年度予算案に2,200万円の予算を計上されました。同構想の素案に位置づけられたプロジェクトの大半は、大津市中心市街地活性化協議会のもとに設置されている大津駅周辺等活性化プロジェクト会議や湖岸デザインプロジェクト会議で実施検討されている事業であり、大津宿場町構想についても町家等歴史的遺産活用プロジェクト会議での成果が基盤になって策定されることになると認識しています。両構想の策定に当たっては、大津市中心市街地活性化協議会のもとに設置されているプロジェクト会議との連携等、相互理解が必要不可欠となりますが、どのような経過を踏まえて必要となる予算計上をされたのか。また、大津市民会館についても、可能性及び市場性調査の対象に含まれていますが、何か特別な意図があってのことなのかあわせて答弁を求めます。

 3点目、歴史的風致維持向上計画の策定に向けた取り組みについて。都市計画部と教育委員会との連携のもと、歴史まちづくり法に基づく歴史的風致維持向上計画の策定を目指し、坂本地区を中心とした基礎調査に必要な予算が計上されました。大津市全域の文化財を保存、活用していくためのマスタープランである歴史文化基本構想の策定に要する予算についても、平成29年度から平成31年度までを事業期間として債務負担行為の設定がなされたところであり、歴史、文化を生かしたまちづくりを進める上において大きな一歩であると評価するものです。
 第5次大津市国土利用計画案においては、歴史的地域の見直しが行われたところですが、大津市は今年度に基礎調査を実施している大津百町エリアとあわせ、今後どういった方針のもとで歴史的風致維持向上計画における重点区域の設定を想定するつもりなのか、これまで国土交通省と行ってきた協議経過とあわせて見解を求めます。

 4点目、立地適正化計画策定に向けた取り組みについて。医療、福祉、子育て支援など都市の活動に関して重要な機能を都市計画に位置づけ誘導していくためには、これらの施策と立地適正化計画が一体となって解決すべき都市が抱える課題とまちづくりの方針を設定、共有していかなければなりません。大津市においても、誘導区域の検討に先立ち必要となる課題解決のための施策方針の設定に取り組むことになりますが、本市においては、金融機関なども含めた多様な職種の民間企業、大学、行政が事業検討や事業発掘をテーマとして対話することを目的に設置された大津市版地域プラットフォームに関する円卓会議とも情報の共有を図りながら取り組む必要があると考えます。
 次期大津市都市計画マスタープランについては、次期大津市総合計画基本構想で描かれる将来都市像の実現に向け、総合計画や国土利用計画に加えて政策調整部が進行管理を行うことになりました。大津市はどういった方針のもとで立地適正化計画の策定を全庁的な取り組みとしていくつもりなのか伺います。

答弁:市長

 大津市都市計画マスタープランの実現に向けた取り組みについてのうち、なぜジュネーブ構想の策定が必要になると判断するに至ったのかについてですが、市民ネット21の代表質問で答弁いたしましたとおり、中央大通り及び湖岸なぎさ公園の利活用について、地形的に似ているスイス、レマン湖畔に位置するジュネーブの道路や湖岸を利用し、かつ歴史的地区を残したまちづくりの手法なども参考に、恒常的なまちのにぎわいを創出するため、調査、検討を行うことに至ったものであります。湖を生かし、文化的な景観を残したまちづくりを参考にするということで、そのままジュネーブと同じようなまち並みをつくるということではありません。ジュネーブ構想とは、市民の皆様とともに進めようとしているまちづくりについて、わかりやすく理解していただくために必要であると考え、言葉としてあらわしたものであります。今後、地域や事業者の皆様と合意形成を図りながら、大津ならではの自然、歴史、文化を生かしたまちづくりについて検討し、水辺を生かしたにぎわいと活気のある大津をこれからつくり上げていきたいと考えています。
 ジュネーブ構想は、次期都市計画マスタープランのまちづくりの理念である自然、歴史、文化を生かす、観光やにぎわい、交流の創出を実現するためのものであり、また議員お述べの国際文化観光都市の決議の趣旨にも沿っており、大津市史をひもとくと、過去にも近畿観光圏を東洋のジュネーブたらしめるという構想があったこととも通じるところがあります。そして、琵琶湖の水の文化が日本遺産に認定された意義についても理解を深めながら、地域や事業者の皆様とともに取り組みを進めてまいります。

答弁:都市計画部長

 大津市都市計画マスタープランの実現に向けた取り組みについてのうち、ジュネーブ構想及び大津宿場町構想はどのような経過を踏まえて必要となる予算を計上されたのかについてでありますが、本市では中心市街地活性化協議会及びその部会となる各プロジェクト会議と連携し、オープンモールやびわガーデンなどの事業に継続的かつ積極的に取り組んでいます。平成29年度当初予算は、中心市街地活性化事業を基本に、道路や公園など公共空間の活用、また湖岸の利活用や町家の利活用策をさらに継続、発展させるために新たな視点も加えて検討するための予算を計上したものです。

 次に、大津市民会館につきましては、中央大通りとなぎさ公園が交わる位置にあることや、ジュネーブ構想において既存のストックの利活用を行うことから、調査対象としています。

 次に、歴史的風致維持向上計画の策定に向けた取り組みについてでありますが、本市の歴史と文化を生かしたまちづくりは大変重要であると考えており、歴史まちづくり法を見据えた取り組みを推進するに当たり、国土交通省の助言に基づき、現在中心市街地活性化区域周辺のエリアを対象とした基礎調査を行っているところです。これまでに国土交通省から、当計画の策定に当たっては全市域に存在する歴史・文化遺産や伝統行事などの調査が必要であること、また重点区域の設定の方針については、歴史まちづくり法において要件となっている重要文化財などがあり、伝統的な地域の活動が存在するエリアであることが必要であるなどの助言をいただいております。したがいまして、重点区域の設定につきましては、歴史文化基本構想を踏まえつつ、全市域にわたる調査を行った上で、重要文化財の分布状況や地域の活動の状況などから、総合的に判断する必要があると考えております。

 次に、立地適正化計画の策定に向けた取り組みについてでありますが、本市は人口減少、少子・高齢化に対応した持続可能なまちづくりを目指していることから、コンパクト・プラス・ネットワークの都市構造が必要であり、その実現のための計画として立地適正化計画は大変重要な計画であると認識しております。そのため、本年度から2カ年で立地適正化計画の基礎調査を行うとともに、公共施設マネジメントの取り組みや福祉・医療施策との整合を図り、解決すべき課題を明確にする必要があることから、庁内関係部局との連携を図ることが大変重要となってまいります。このことから、都市計画マスタープランの高度化版である立地適正化計画に向けた取り組みについては、都市計画部が中心となり、マスタープラン案策定庁内作業部会に医療、子育てなどの担当部局を加えた体制強化を図り、横断的な組織体制で取り組む方針であります。 

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